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いわき市上高久産ステゴロフォドン象の下顎骨化石

歯の化石からわかるゾウの違い?

解説

 本標本は、1985 年(昭和60 年)7 月にいわき市上高久地区のいわきニュータウン造成工事中に発見された、ステゴロフォドンという絶滅した古代ゾウの下顎骨の化石である。この化石は、新生代新第三紀前期中新世末頃(約1700 万年前)の河川や河口付近で堆積した白土層群吉野谷層から産出した。
 日本ではナウマンゾウをはじめとして、たくさんのゾウ化石が見つかっているが、ステゴロフォドンは、日本で見つかったゾウ化石のなかでは、岐阜県で発見された日本最古のアネクテンスゾウ(ゴンフォテリウム類)に次いで古い時代のものである。ステゴロフォドンの化石は、タイ・中国・ミャンマー・日本などのアジア各地で発見され、国内では、西は長崎県から東は宮城県までの広い範囲で見つかっている。いわき市からは、1971 年に最初の臼歯化石が発見されて以降、複数の化石が採集されており、その標本数は国内でも有数である。
 本標本は、下顎骨に左右2 個ずつの臼歯と先端部には2 本の切歯(牙)がある、ほぼ完全な形の下顎骨化石である。この化石の発見によって、ステゴロフォドンは下顎にも切歯を持っていたことが初めて明らかとなった。この下顎の切歯は、より進化した種類では失われていることから、この化石はまだ原始的な形質を残していると言える。
 また、1988 年(昭和63 年)にはこの化石を基準にして、臼歯によっていくつかの学名が付けられていた国内産出のステゴロフォドン臼歯化石の比較研究がなされ、上下、左右、成幼体、雌雄についての分類が可能となった。同時期に生息していたゾウにはゴンフォテリウムがいるが、これは臼歯が下から上に生え変わる垂直交換型であるのに対して、ステゴロフォドンは現生のアフリカゾウ・アジアゾウと同じく、後から前に臼歯を押し出して生え変わる水平交換型である。
 国内で発見されるステゴロフォドンは、時代が新しいものほど小型化する事が知られており、これは日本列島の島嶼化に適応していく過程と考えられている。本標本は小型化の最終段階一歩手前のものであり、ゾウの進化を考えるうえで重要な化石といえる。そのような重要性の高さから、1991 年(平成3 年)3 月に福島県の天然記念物に指定された。
指定区分
県指定
種別
天然記念物
住所
いわき市常磐湯本町向田3−1
施設名
いわき市石炭・化石館(ほるる)
指定年月日
平成3年3月22日

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