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おきなめん

翁面

面の裏にはどんな銘が刻まれていたのでしょうか?

 能の演目のひとつである翁は、別格に神聖視されているもので、儀式的な意味合いが強いとされます。この翁面はその際に使われるもので、幕府御抱え面打師の中でも特に優れた作り手によって生み出されました。面の裏には、作り手の銘も刻まれています。
 くにゃっと下がった目尻は愛嬌があり、歯が欠けた口元もこちらの笑みを誘います。
 実際にこの面を着けた能をみてみたいと思わせる逸品です。

解説

 翁は能の一つで、天下泰平・国家安穏を祝祷する祭式的な性質がある。俗界を放れた 清浄境を表すために、面の皺の表現、飾り眉、飾り紐などに宗教的な作法が取り入れられ、他の能にさきがけて舞われる。
 津神社所蔵の翁面は、下川村横町(泉町下川)出身の能面師水野谷加兵衛が、万治2年(1659)9月に鎮守である同社に奉納したものである。
 翁面は桐材を用い、切顎になっていて、顔面部と下顎部に分れ、紐でつないである。額や頬の皺彫りは穏やかで、目はわん曲して目尻が下り、歯の欠けた様など、翁の風貌を良く表現している。唇は朱を塗り、眉・髭には白毛を植えている。能の中で翁は最も神聖視されているが、この面はそれにふさわしい作品である。背面は穏やかな鉋 目を残し、次の刻銘がある。
 御面岩城住菊田郡 下川村奉掛御宝前
 万治二己亥九月吉旦
 水野谷加兵衛作
 水野谷加兵衛は大野出目家3代助左衛門(幕府御抱え面打師)の養子となり、4代の名称をついだ。洞白満喬の前名で備後掾、後に淡路掾と称した。制作期は貞享・元禄の頃で「天下一」と号した。出目家代々の内でも傑出した作者で、泥彩色は無類とされている。正徳5年(1715)83歳で没した。この翁面は洞白壮年期の優れた作品で、制作年代が明らかな標準作である。
指定区分
市指定
種別
有形文化財(彫刻)
住所
いわき市泉町下川字神笑
施設名
津神社
指定年月日
昭和43年12月27日

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