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もくしんかんしつこくうぞうぼさつざぞう

木心乾漆虚空蔵菩薩坐像

どんな技法でつくられているでしょうか?

 なんと細かく、そして上品に高く結い上げた髪形を表現しているのかと驚きます。虚空蔵菩薩が座る、花弁状に彫られた台座の彫刻も素晴らしい。
 像は木心乾漆造りという、木彫りでおおまかな形をつくり、その上に木屎(こくそ)という木くずを混ぜた漆を盛って仕上げる技法でつくられています。体全体からは、ゆったりとした雰囲気を感じますが、一方で肉付きの良い上半身やシャープな目鼻立ちでありながらふっくらとしたお顔からは、豊かな知性があふれ出ているよう。
 右手には智慧(ちえ)や救いの力を表現した利剣を持っています。今は失われていますが、左手には願いを叶えるという宝珠(ほうじゅ)を持っていたとされます。じっと手のひらを見つめると失われた宝珠が見えてくるような気がします。

解説

 能満寺の虚空蔵像は、五重の八花形の台座に趺坐し、細かく櫛目を入れた大きな宝髻を高く結い、地髪に食い入るように幅の広い天冠台が共彫りされている。ややつりあがった眉目、直線にのびた高い鼻稜、豊かな頬、下唇が小さく引き締って、口元にはかすかに古代微笑をただよわせた容貌は、優しさの中にも尊厳さを秘めている。
 衣文は半裸に近い上体に、乾漆特有のやわらかな表現で穏やかに整えられている。がっちりした両肩から胸部へかけての肉付きも、張りのある豊かさを示している。なお、両手首・裳先・台座は後補であり、右手に利剣、左手に宝珠を持っていたが、現在宝珠は失われている。
 木心乾漆像とは、像の大体の形を木彫りにして、その上に木屎を盛って仕上げる技法で、奈良時代に盛んに行われた造像技法である。
 数少ない典型的な木心乾漆像で、檜材を用いた一木造り、膝前は別材(後補)を矧ぎ、胎内を円筒状に内刳りし、背面中央で縦に細く地付きまで背板をはめている。両手は上肘部で矧ぎ、両手先は後補である。
 もとは奈良の東大寺にあったものを、小泉三申(策太郎)を経て、昭和20年(1945)、能満寺に施入された。
指定区分
国指定
種別
重要文化財(彫刻)
住所
いわき市常磐西郷町忠多
施設名
能満寺
指定年月日
昭和31年6月28日

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