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もくぞうかんのんぼさつはんかぞう(たきみかんのん)

木造観音菩薩半跏像(滝見観音)

何かを眺めているお姿だとか。何を眺めているでしょうか?

 なんて優雅なお姿なんでしょうか。この観音菩薩半跏像は、ゆったりとした空気を全身にまとい、体を少し斜めに倒しながら右足を曲げて左ひざに置いた状態で岩の上に座り、滝をながめている姿を表現しています。その様子から滝見観音とも呼ばれ、絵画的・鑑賞的に表現された特徴を持つ仏像です。
 たなびくように波打つ美しい衣にもうっとりしますが、特に目を引くのが頭に着けた宝冠と胸の飾り。どちらの細工も細やかで美しく、観音菩薩をより魅力的な姿へと演出しているようです。
 菩薩の後ろに広がる光背にも注目してください。雲の形をした透し模様の光背に、人々を救うために現れた仏の化身である化仏があちらこちらに配置され、より強い救いの力が表現されているように思えてきます。

解説

 この観音菩薩は、滝見観音とも称されている。半跏像とは左足をふみ下げ、右足を折ってその足首を左膝に乗せて坐った像をいう。本像は鎌倉時代末期から室町時代にかけて盛んに画題に選ばれた滝見観音を彫刻したもので、従来の仏像とは趣が異なり、絵画的・鑑賞的に表現されている。このような例には鎌倉市東慶寺の木造水月観音像(神奈川県指定)、郡山市中田町駒坂観音堂の水月観音像(県指定)などがある。
 禅長寺仏殿に安置されている本像は、右手を右斜め後方につき、左手を膝の上において体をやや斜横に倒し、岩座の上に半跏して滝を眺めている姿である。
 ご尊顔はやや面長な豊頬で、可愛らしく美しい。細い切れ長の眼には玉眼が入っている。頭の宝髻は高く宝冠をいただき、胸には瓔珞を付けている。膝に掛かる衣や岩座に長く複雑に垂らした彫りの浅い衣には、土紋彩色による花鳥文や唐草文が盛りあげの手法によって表現され、当代の典型的な特徴がみられる。光背は雲文を透し彫りにし、化仏を配している。
 胎内に造像銘札があり、次のように記してある。
(表面墨書) 西方仏師 備後律師院尊作之
(裏面墨書) 応永第十七年正月十三日 造立丁(花押)
 本像は応永17年(1410)1月13日に仏師院尊が制作したもので、当時の典型的な様式手法を示し、室町美術の先駆的役割をなす作品として美術史上重要である。また、当時禅長寺が鎌倉建長寺の末寺であったことから、来路は極めて明確である。なお、当寺は江戸時代初期に大覚派から妙心寺派に転派した。
指定区分
県指定
種別
重要文化財(彫刻)
住所
いわき市小名浜林城大門
施設名
禅長寺
指定年月日
昭和38年3月20日

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