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もくぞうこくうぞうぼさつざぞう

木造虚空蔵菩薩坐像

木製の宝冠は何という名前でしょうか?

 ふっくらとしたお顔と、そこから続くあごから首元には数本のしわが彫られていて、妙に親近感がわく木造の虚空蔵菩薩坐像です。
 ふっくらと幸せそうなお顔の作りではありますが、彫り出された眼や薄いくちびるは冷静かつ慈悲の表情をたたえているように見えます。
 驚くのがこの宝冠。のちの修理で付け加えられた大振りの銅製の宝冠に加え、五山宝冠と呼ばれる大きな木製の宝冠も頭上にいただくという豪華さ。それも、五山宝冠の背面部は本体から彫り出されているというのです。仏師の頭の中には明確な設計図があり、材をいかに上手く使って像を彫り出すかを考えていたということになります。
 全体的にどっしりとした見た目は見るものに安心感を与えます。この地方で広がる虚空蔵信仰の広まりを物語る貴重な仏像です。

解説

 下高久志農田の虚空蔵堂は、真言宗に属する満願寺境内の堂宇の一つであったが、明治初年に廃寺となり、堂宇だけが残り現在に至っている。
 堂内に安置されている木造虚空蔵菩薩坐像は、単髻を結び、大きな木製の五山宝冠をいただく。宝冠は前面部を別材で彫り、頭部に載せ、背面部は本体から彫出されている。天衣 、条帛をかけ、裳をまとう。右手は胸前にかまえ剣を持ち、左手の掌の上に宝珠を載せ、右足を上にして蓮華座上に結跏趺坐する。両耳後と体側を通る線で頭体幹部を通して前後に二材を矧ぎ合せた寄木造りの構造で、眼は彫眼とする。また三道、頭髪を彫出する。
 現存する修理銘札により、本像は享保元年(1716)に修理されたことが知られ、銅製の大振りな宝冠と胸飾り、さらに木製宝冠の前面部、また両手指先の一部、両手持物、彩色はこの時の補修と思われる。
 本像は髻が大きく、充実した面貌を現し、また胸・腹部も奥行きのある重厚な造形が認められる。全体にやや地方的な作風がみられ、在地の制作と考えられるが、この地方における虚空蔵信仰の広まりを物語る作例として貴重である。造立は鎌倉時代後期、あるいは南北朝時代に入ると思われる。
指定区分
県指定
種別
重要文化財(彫刻)
住所
いわき市平下高久字志濃田
施設名
虚空蔵堂奉賛会
指定年月日
平成15年3月25日

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