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つば(めい)むついわきたいらじゅうまさつぐさく

鐔(銘)陸奥岩城平住正次作

裏面も抜かりなし。裏にはどんな図が彫られているでしょうか?

 わずか8センチの円の中に、こんなにも豊かな世界があるのかと驚いてしまいます。
 鐔とは刀剣の柄を握る手が刀身の方にすべらないように、また相手からの攻撃を防御するための刀装具のことを言います。つまり防具のひとつになるわけですが、様々なデザインや装飾があり、鐔の細工を専業とする金工たちが存在していました。
 この鐔は表に金の雲がたなびく富士山、三保の松原と思われる松の木々、左には舟をこぐ漁夫が金でデザインされています。裏にも舟があり、裏表のどちらも細工がなされています。腰に刀を差していているところを想像してみてください。主に見えるのは鐔の表で、角度によっては裏の船は見えないですが、見えない部分も意識する持ち主のおしゃれ心にかっこよさを覚えます。

解説

 鐸とは、刀剣の柄と刀身の境目にはさみ、柄を握る手を防護する刀装具の一つである。
 この鐸は鉄地丸型で、耳は角耳で小肉、鐸の外側はまっすぐにすられている。茎孔の他は小柄櫃のみで、笄櫃は赤銅で埋めてある。
 図柄は清見潟で、表面の右上部に秀麗な富岳を、その左右と下部には雲をあらわし、前景には数本の松樹があるのは三保松原と思われる。中景は、右の山水・楼閣は清見寺で、左下には舟をこぐ漁夫をあらわしている。切羽合には「陸奥岩城平住正次作」の刻銘があり、裏面には帆掛舟の図がある。これらの風景は、たがねの刻と金銀の色絵平象嵌で表現されている。作者の正次については、この鐸の他に作品が知られていないため明らかでないが、作風からみると江戸後期の作家で、正阿弥系の鐸工と思われる。
 いわき地方における鐸工の存在は、文献の上では2、3知られているが、この鐸によって平に正次を名乗る鐸工の存在が確認でき、いわきの金属工芸史上極めて重要な作品である。
指定区分
市指定
種別
有形文化財(工芸品)
住所
いわき市平堂根町4−4
施設名
いわき市立美術館
指定年月日
昭和52年11月1日

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