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ししゅうあみださんぞんしゅじかけふく

刺繍阿弥陀三尊種子懸幅

髪の毛を使って刺繍しているのはどこでしょうか?

 こんなに思いが込められたものがあるのだなと知ることができる刺繍阿弥陀三尊種子懸幅です。
 種子とは梵字(ぼんじ)のことをいい、この懸幅の中央にある三つの梵字のことを指します。
 1番上の大きな種子が阿弥陀如来を表し、下の2つが阿弥陀如来の両どなりにひかえる観音菩薩、勢至菩薩を表す種子が刺繍されています。
 そこで注目したいのが、種子の刺繍。この刺繍は通常の糸を使って刺されたものではなく、懸幅を奉納した遺族の毛髪を使って刺繍されたと考えられています。このように亡くなった人への悲しみから遺族が自らの毛髪を使って刺繍し、繍仏を作ることは珍しいことではなかったようです。
 種子以外の部分は、通常の糸を使用し、非常に美しく刺繍がされています。特に上部から垂れ下がる瓔珞(ようらく)という飾りの、細やかな編み目には驚かされます。

解説

 剌繍の技法は、わが国へ6世紀の中葉に仏教とともに伝えられた。聖徳太子が没して間もなく、妃の橘大朗女は天寿国曼荼羅を刺繍で作り太子を供養した。これが現存最古の遺品である。奈良・平安時代にも作られ、鎌倉時代になると住生者を極楽ヘ導く阿弥陀の来迎図や、阿弥陀三尊の種子など浄土教関係のものが多くなる。
 この懸幅は上部の天蓋からは瓔珞がさがり、その下に3つの円相がある。上の大きな円相には阿弥陀の種子、その下左右の円相には観音・勢至の種子がある。この種子は毛髪で刺繍され、五彩の糸で繧繝風に刺繍された蓮台に安置されている。刺繍に毛髪を使用することは、源頼朝が没し、その法事に際して妻政子が自らの髪を切って繍仏をつくって供養していることから、この懸幅の種子の刺繍も遺族の毛髪と思われる。
 下部の案には獅子型の香炉 、左右には花瓶が配してある。これらも五彩の糸で刺繍され、鎌倉時代の優れた工芸品として注目される。
 県内にはこのような繍仏が数点ある。相馬郡鹿島町の阿弥陀寺所蔵のものは、南無阿弥陀の名号をあらわし、国の重要文化財に指定されている。手法においてはこれに劣らない優品である。
指定区分
県指定
種別
重要文化財(工芸品)
住所
いわき市四倉町薬王寺塙
施設名
薬王寺
指定年月日
昭和39年3月24日

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