facebook twitter instagram Line
もくぞうじぞうぼさつはんかぞう

木造地蔵菩薩半跏像

凛々しい地蔵菩薩です。右手に何を持っているでしょうか?

 右足を曲げ、左足を下におろして座る半跏という姿で、キリッとした目鼻とひきしまった口元は力強い雰囲気をしていて、眼に入っている水晶で作られた玉眼がキラリと光ります。頭部や顔に残るいくつかの傷が生々しいですが、それがかえって親しみを感じさせるというもの。
 また、この地蔵菩薩は、右手にはあらゆる病気を除くという錫杖(しゃくじょう)を、左手には宝珠(ほうじゅ)を持つ典型的な半跏形式をしています。
 造られた年と造った仏師の名前が像の底部に書かれている点でも貴重な像となっています。また、像の胎内には文書類が納められ、当時の人々がこの仏像に篤く信仰を寄せていたことを後世の人々に伝えています。

解説

 地蔵菩薩は、地蔵十王経の信仰普及とともに閻魔王の本身と説かれ、地獄における救済者として信仰を集めるとともに、現世における貧困や病苦からの救済をも兼ね備えた尊像として鎌倉時代以降、全国的に夥しい数の地蔵像が造立された。
 本像は、左足を踏み下げて座る、いわゆる半跏形式の地蔵像である。構造は、寄木造り、玉眼嵌入、古色仕上げである。
 像底部裏面に墨書銘が認められ、貞享元年(1684)に下野国宇都宮町仏師右京により造立されたことが明記されている。
 本像内には、慧照なる者の浄土宗名越派の五重相伝と、布薩戒の血脈が納められていたが、現在は外に出されている。
 五重相伝は初重から五重まで揃っており、名越派の本山専称寺の末寺である白河城下の大悲山専念寺から、延宝3年(1675)に授けられた相伝である。
 布薩戒血脈は、延宝5年(1677)に同じく専称寺の末寺である二本松城下の善性寺が授けたものである。
 本像は、宝珠、錫杖を執る典型的な地蔵半跏形式の特徴を示し、造立年と仏師名が明らかな墨書銘を有することにより、江戸時代に造立された多くの地蔵像を考察するうえでの貴重な基準作のひとつに位置付けされる。
 また、同像の胎内に納められていた血脈等の文書類も、当時の庶民信仰を伺う点において貴重である。
指定区分
市指定
種別
有形文化財(彫刻)
住所
いわき市遠野町上遠野根小屋
施設名
円通寺
指定年月日
平成16年4月28日

その他の高精細コンテンツ

TOP