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もくぞうせんじゅかんのんりゅうぞう

木造千手観音立像

特徴的な技法を使って彫られています。どんな技法でしょうか?

 とてもふっくらしたお顔に施されたぽってりとした唇と涼やかな眼に引き寄せられます。
 1本の榧(かや)の木から彫り出した像で、堂々とした体の質感は安心感を覚えます。頭上に施された化仏(民衆を救うためにさまざまな姿になった仏のこと)は別の木材で作られていました。
 特筆すべきは、鉈(なた)彫りと言われる、縞模様の彫り痕を見せる技法で作られていること。浜通り地域にあったことは仏像彫刻を知る上で意義深い事例となります。

解説

 本像は、現在諏訪作にある諏訪神社境内の堂に安置されているが、もとは青滝の堤の上にあった青滝寺に安置されていた。同寺は、室町時代には如来寺の末寺で浄土宗であったが、江戸時代初期に羽黒派の修験寺となった。明治に入り、修験寺の廃止・廃寺・火災などが重なり、明治3年1月28日現在地に移したという。
 千手観音は六観音の1つで、正しくは千手千眼観自在菩薩という。本誓は一切衆生のために地獄の苫悩を救い諸願成就、産生平穏をつかさどるという。
 本像は榧の1本彫りで、背部や腰部に鉈彫りの手法を残し、中刳りは施されていない。ずんぐりとした体躯は堂々とした感じであり、豊かな頬と切れるような眉など顔容は優れている。頭上の化仏は別材で造られ、4体が現存している。全体として虫害を受けており、幾条かの乾割もあって保存状態は良くなく、手や足には後補がみられる。
 藤原時代末の様式の名残を示してはいるが、全体的な像容や脚部・背面を荒削りに残したままの点などを考えると、鎌倉時代初期とすべきであろう。
 鉈彫りの仏像は11世紀末以降、東国に出現した特異な彫刻で、福島県では会津・中通りにあって、従来皆無であった浜通りで本像が明らかにされたことは仏像彫刻の上で意義は大きい。
 なお、この観音像は諏訪明神の本地仏である。
指定区分
市指定
種別
有形文化財(彫刻)
住所
いわき市平絹谷諏訪作
施設名
絹谷区
指定年月日
昭和43年12月27日

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