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けんぽんちゃくしょくみろくぼさつぞう

絹本著色弥勒菩薩像

蓮台の後ろに描かれた2本の筋は何を表しているでしょうか?

 絵を描くために仕立てられた絹布(絵絹)に描かれた弥勒菩薩の来迎図です。
 なんともたおやかな表情で、救いを求める人を大きく包み込むような、おおらかな姿に見入ってしまいます。 弥勒菩薩は釈迦が亡くなったあと、56億7000万年経った時に如来として再びこの世界に現れ、人々を救う存在とされます。
 この図は非常に華やかな姿をした弥勒菩薩が人々を極楽浄土に迎えるため、踏割蓮台と言われる台に立ち、人間界に降りてきている様子を表現しています。「一刻でも早く人々を救わねば」ということだったのでしょうか。右足は半歩前に出て、蓮台の下には雲がうず巻き、長く尾をたなびかせることで、ゆったりとした弥勒菩薩とは対照的に足元はスピード感を表しています。そこに弥勒菩薩の優しさを感じます。人々はこの図を前に、極楽浄土へ行くことを夢見ていたのでしょう。

解説

 弥勒菩薩は梵名を阿逸多菩薩といい、釈迦の滅後、56億7000万年に再びこの世界に出現して、華林園内の竜華樹の下で成道し、三会の説法をして、釈迦の救済に漏れた人々を済度するという未来仏である。
 本図は弥勒菩薩独尊来迎図で、雲に乗って下降する立像を描いている。その姿は結髪して髻を高く結い、前立式の大きな宝冠をいただき、中に化仏をおく。身には如来形のごとく袈裟・祗支・裳をまとい、また耳璫・瓔珞・腕釧・足釧で飾る。右手は軽く肘を曲げて垂下し、五指を伸ばし、掌を前にあらわす。左手には蓮の茎をとり、頂上の蓮華の上には弥勒菩薩の標識である宝冠(五輪塔)をのせている。両足はやや開き、右足を半歩前に進め、踏割蓮台に立っている。蓮台の下には雲がうず巻き、長く尾を後方に引いて速度をあらわしている。頭部の後方には円相の頭光と、21本の光芒がはなたれている。衲衣には麻の葉と、截金の文様が施されている。肉身部から着衣の部分におかれた金箔や彩色はかなり剥落しており、面相のいたみは特に激しいが、その下から力強い墨の描線がみえる。
 仏体が弥勒であるために珍しい図相というべきであろうが、光芒の様子、着衣の衣文のさばき具合、蓮台や雲の描写はすでに定型化した来迎図の形式であり、絵絹の仕立ては二幅一鋪である。この図相や描写からみて、その成立は鎌倉時代後期と思われる。
指定区分
国指定
種別
重要文化財(絵画)
住所
いわき市四倉町薬王寺塙
施設名
薬王寺
指定年月日
明治39年4月14日

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